あーやれやれ、と店を閉めようとしたら、隣の本屋のタバコの自動販売機の前に、何やら

・・・・人が!

雨が降った跡の濡れたアスファルトの上に、横たわる人陰。
これが茶パツの中高学生だったりしたら、頭から血を流していようとも、
『趣味に違いない』
無視するところだが、
(大の字の大股開きで中学女子が店の前の道ばたに倒れていたので、病気かと思って近付いて行ったら、『見んな、ぼけ!』と言われた事がある。
うちの店の中からでも、君のまっかなパンツが見えるよ、勘弁してくれい、とんだ営業妨害だよ。
とか思っていたら、まっかなビキニ水着である事が判明。
その場で前をはだけてゴロゴロし出したのだ。近年、羞恥心のナイ馬鹿が増えた)
おばさんであったのだ。

救急車を呼んで、声をかける。
うなり声のような返事がある。
こういう時意識を保たせた方がいいのであろうか。
ひっきりなしに声をかけようとしても何を聞いていいのか分からない。

そんな時、通りがかったおばさんが、
「その人どうしたの?」私に話し掛けてくる。
私が知りたい。
「とりあえず、郵便出してくるわね」
といって犬を連れて郵便ポストに行くおばさん。
「春先になると危ないって今日テレビで言ってたわ」
かえってくるだに、思いっきりテレビネタで語りはじめるおばさん。
そうこうするうちに倒れているおばさんは、いびきをかきはじめた。
『これもしや、脳いっ血とかか?』
とか焦りながら、通りがかった、だんなさんを亡くして一人暮らしで、ひびいろんな不安を抱えているおばさんの身の上話を聞く。
「私が倒れても犬は助けてくれないもの」
犬を見ると、近所の野良猫達と遊んでいた。
そのうちおばさんは犬猫達と遊びはじめた。

『この倒れてるおばさんに意識があったら、怒ってるだろうな〜。
意識混濁で不安になってるだろうに、横で人生相談受けてて、しまいには犬猫が飛び跳ねてる。
でも私のせいじゃないんだ。
倒れてるおばさんは返事もしなくなっていびきかいてるし、通りがかったおばさんは熱心に話し掛けてくるんだ。
私のせいじゃない〜〜〜』

救急車が来て、倒れていたおばさんが運ばれんとするその時、お隣の散髪屋さんのねえちゃんが、
「どうしたの?」
と声をかけて来た時には、気疲れの余り、
「見ての通りだ...」
と応えた。

見て分からんものは聞いても分からないと言うが、参加していてもとんと分からない。
そこに倒れている人の横で、みのもんたの健康食の信憑性について熱心に質問する人の気持ちなど...。

とりあえず、みのもんたがより嫌いになった高村であった。

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