大塚美術館はなんだかんだといって、絵画しかなかった。

有間さんと楽しく遊んでいられるうちは良かったが、だんだん無口になって、疲れてくる我ら。

覚えがあるこの感覚。

「ナショナルアートミュージアム(英国)を思い出すね」

有間さんと一緒に行った英国旅行で(フリー旅行だったのだ)行った美術館である。

大英博物館は3日かけても退屈しなかったのに、アートミュージアムは拷問の域まで達してしまったものだ。

「フェルメールなんかもう、どーでもいい」

「ラファエロはもう飽きた・・・」

「疲れた。もう出たい」

とうとう逃げ出したのだ。

たこやきの時も思ったが、つい、限界を超えてしまうのは良くない癖である。

『髭の生えた女の肖像』

どうやら実在の人物で、となりにいる亭主と同じ髭面をした女が赤子に乳をやっている絵画に、みなの目が集まった。

でー:「描き留めておかねば!という、伝記作家の心を感じるよ」

高村:「問題は、この亭主が髭の生えた女に子を生ませたと言うところにあると思う!顔と体とどっちが好みやったと思う?」

有間:「高村。生まれてから生えてきたんだよ、きっと」

とど:「なんで、剃らないのかな?」

もはや、ゲテモノ以外は目に行かない精神状態だった。

シャガールの絵画で、男の顔が上下逆に付いているものがあった。

有間:「君には頭がシャガール(下がる)・・・・!」

ははははっはは!どこか気が抜けた笑いを飛ばしていたあたりが、私たちの限界だった。

蛍の光に背中を押され、どこかほっとして、美術館を後にした。

私は、美術館には向かない女だ。

今度から、趣味は「美術観賞」ではなく「博物観賞」にしておこう。

コメント