有間さんは病院薬剤師だ。
しかも広島の。
高村の脳内にある広域暴力団の白地図には、思いきりピンクで色が塗られている。
だから?病院には稀に、

「自転車に曵かれたんです」

小指を切り落とした人が来ると云う。
そんな時はいくら心で
「つめたんや、この人」「なんて苦しい嘘だ」
思っていても、処置をしている医者も、看護婦もなんにも言えない。
入れ墨なんかしていると、さらに沈黙率が上がるという。
処置室から、看護婦さんが薬局にやってきて、
「その人もうじき来るから。」
一切合切云いたかった事を言って帰るのである。
そして有間さんは
「ああこの人か、自転車で曵かれたと言う・・・(笑)」
心の中で静かに呟く。そして鉄面皮で化膿止めだの処方する。

そんな心で思っているだけでは、暴力団が減らないじゃないか。
高村:「やはりそういう時にはガングロ女子高生たる人々に、役割が期待されるのではないだろうか」
有間:「ガングロ女子高生ですか」
高村:「うむ。理屈が通用しないあの独特の喋り口調で、
『やだ〜、今どき入れ墨なんかダサイ〜(↓)』
だの
『仏教の絵柄なんて、きもい〜(↓)太ったおばさん〜(↓)』
だの
『菩薩やめて、キリストとかにすれば〜(↓)』
だの
『つめた指はどうするわけ〜?(↓)』
『食べるんじゃないの〜?(↓)気色悪い〜(↓)』
だの言ってもらってはどうだろう」
有間:「やっちゃんはこわいのよ?」
高村:「大丈夫だ、あのガングロの化粧は、アフリカのとある部族に伝わる、狩りの化粧なのに違いない。
女子高生はあの化粧を施す事によって、理性と知性と感情、そして個性までも個性と言う名の没個性の仮面の下に塗り込められる事ができるのだ。
私はガングロの高校生がどこで衝動殺人を起こしても、全く意外には思わないし、やっちゃんに喧嘩を売るのなんて問題外だよ」

という笑い話をした。
だが、集団であの口調で言えば減りそうな気はする。
あの傍若無人のパワーにはちょっと期待してもいいような気がするが、彼女達の思考回路は確実に私の常識の範囲とは違うから、迷惑をする事はあっても、いかなる利益をも得る事はないだろう。

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