チンピラと言うのが、職業でなく、一種、彼に許された唯一の属性であると言う事を気付いた瞬間。
彼、と言うのは、近所の金髪の兄ちゃんの事である。
脱色と言う行為は、高村にとって(男性に限って言えば)、小学生:親の脳味噌がおかしい・中高生:社会への反抗、単なる自己顕示の手段・大学生または肉体労働の兄ちゃん:ファッション・25才以降:どうかしている。
と言うように分類される。

まあ、そんな、どうかしているアンちゃんがやってきた。
絵に描いてそれを立体に起こしたようなチンピラファッションに身を包んだ彼は、
「俺、町内会長の息子の、○○やねんけど。事情きかんと、注射器売ってくれへんかな?」
「お断りします」
1秒の逡巡も無く、返事をする私。
確かここの町内会長、前任者が会計と結託して5年間使い込みをし、高層団地のエレベーターまで止まる(電気代が払えなくて)という、緊急事態を招いた後だけに、かなりしっかりした人が選ばれたはずである。
きっと、問題を起こした前会長の息子であろう。
だが、普通、こんな事を言って買いに来るやつがいるだろうか?
世の中には色々いるものである。

翌日、またやってきた。
「なんで〜?ほかの薬局は売ってくれたで」
「じゃあ、そこに行きなさい」
すでに彼は私にとっての客ではなかった。

さらに翌日。
「入らん訳じゃないんやろ?何にやったら売ってくれるん?」
「あんたの言うこの注射器は、糖尿病患者用や」

さらに翌日。
「俺のおじさん、糖尿病で、こっち来たんやけど、数足らんようになってもて」
「思い付きで言ってるやろ?」
絶句ものの馬鹿、と言うのに始めてであった瞬間であった。
「ほんまや、うちのおじさんら、打って打って、打ちまくりや〜」
「・・・」
高村、ショックで目も眩むような、馬鹿!!
いっそ、新鮮・・・・である。

高村は、麻薬さすやつは、どこぞの孤島で、人の迷惑にならないように、麻薬さしてれば良いのにと思う。(そして、やくざの資金源にならないうちに死んでくれ)
ものも知らんとさされてしまった人は?だと?
親に刺された幼児ならともかく、痩せ薬だと言って刺された等と言うような女子高生なんて、はっきり言って確信犯の言い訳でしかないだろう。
そんなのに気を遣うから、世の中良くならないのだ。
だいたい、
「良い痩せ薬有るよ」
とか駅で声をかけられて、マンションまでついていくやつの頭の中って、どうよ?
存在していて欲しくない。私は。

次の週。
「なあなあ、500本で、なんぼにしてくれる?毎週500本ずつ欲しいんだけど?」
「売らん!ゆーたら売らんのじゃあ!!」
正直、どうせ組むなら、せめてもっと頭の良いやつが良い。
君の足りない頭を考慮して、料金を算出するならば、そのオファーには、一億円のペイを要求する。
それでも全然割に合わない感じだが。
とか、考えながら、穏便に断るのに、たっぷり2週間ぐらいかかってしまった。
やれやれである。
逆恨みだけは一人前だからなあ。

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